富士通が2026年9月、社内に蓄積された約3000万件の文書データを検索・活用可能なRAG(検索拡張生成)システム「ナレッジAI」を全社員約18万人に向けて本格展開する。発表によると、従来のキーワード検索では見つからなかった暗黙知や過去の提案書、技術ノウハウが自然言語で引き出せるようになり、提案業務の工数を平均3割削減する効果が見込まれるという。
3000万件の文書資産を「問える」資産へ
富士通は長年、SI事業やコンサルティング事業で膨大な提案書、仕様書、障害対応記録、技術ブログなどを社内システムに蓄積してきた。しかし、キーワード検索では「類似案件の失敗要因」や「特定技術の導入判断プロセス」といった文脈依存の問いには答えられず、ベテラン社員の頭の中にしかない知識が属人化していた。
同社デジタル変革本部の担当者は「検索ではなく『質問』で知識に到達できる仕組みを作りたかった」と話す。ナレッジAIは、社内文書をベクトル化して意味検索可能にし、大規模言語モデル(LLM)が参照元を提示しながら回答を生成する構成だ。参照元ドキュメントへのリンクが自動付与されるため、ハルシネーション対策と信頼性確保を両立している。
PoCから本番へ、ガバナンスと権限管理を統合
2025年度下期から約1年間、約5000人のエンジニア・営業でPoC(概念実証)を実施。この段階で「権限管理」「情報鮮度」「コスト最適化」の3課題が顕在化した。
権限管理では、機密度ラベル(社外秘、部門限定、全社公開など)を文書単位で継承し、質問者の権限に応じて参照可能な文書のみをRAGの検索対象に含める仕組みを導入。情報鮮度では、四半期ごとの一括再インデックスに加え、主要ナレッジベースについては更新検知型の差分同期を併用。コスト面では、クエリ分類ルーターを導入し、単純なFAQは軽量モデル、複雑な技術相談は高性能モデルへ振り分けることで、推論コストをPoC比で約6割圧縮した。


