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AIで調べた判例3件が存在せず『無責任の体系と沖縄戦』回収・絶版 高文研が発表

デイリートピックス編集部公開: 2026/10/09約4分で読めます2 views

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出版社の高文研は、2026年9月に刊行した島袋純著『無責任の体系と沖縄戦』を絶版とし、回収すると発表した。高文研は本書147頁から149頁の「沖縄戦におけるスパイ容疑住民虐殺に関する国際裁判の判例」に挙げた3件が現実には存在しないと説明した。著者の島袋純琉球大学教授が人工知能(AI)を使った検索結果を精査せず採用したことが原因だった。10月8日から9日にかけて沖縄タイムス、共同通信、産経新聞、毎日新聞がこの発表を報じた。

本書はA5判・並製・184頁で、税込定価は2420円、ISBNは978-4-87498-988-3だ。高文研は個人の購入者に返金し、書店と図書館に返品を求めた。毎日新聞は、島袋教授が知り合いの研究者に献本し、その研究者が捏造と指摘して誤りが発覚したと報じた。書店には9月11日に200部を配本したが、販売数は把握できていないという。

存在しなかった3件の判例とAI検索の経緯

高文研のお知らせは、問題箇所を本書147頁から149頁の「5.沖縄戦におけるスパイ容疑住民虐殺に関する国際裁判の判例」の①②③と特定した。高文研はこの3件が現実には存在しないものだったと明記した。他の頁の誤りには触れず、問題をこの3件に限定して説明した。

経緯について高文研は、著者が「スタンフォード大学図書館バーチャル判例集国際犯罪裁判記録というデータベース」から当該判例をAIを用いて検索し、出てきた結果を精査せず採用してしまったため生じたと説明した。使用したAIの製品名や検索日時、検索語はお知らせに記載がない。データベースの正式名称やURLの確認もお知らせに記載がない。

産経新聞と共同通信は、著者がウェブ上のデータベースからAIで検索し、3件の事例が存在せず、精査しないまま引用したと伝えた。毎日新聞は、島袋教授が学術機関の国際犯罪裁判記録のデータベースから生成AIを使って判例を検索し、事実かどうか精査せず採用したと報じた。いずれの報道もAIの製品名には触れていない。

献本先の指摘で発覚 200部を配本

誤りの発覚経緯を最も具体的に報じたのは毎日新聞だ。毎日新聞は、島袋教授が知り合いの研究者に献本し、その研究者が捏造であると指摘して誤りが発覚したと報じた。産経新聞と共同通信は外部からの指摘で発覚したとだけ伝えた。

毎日新聞は、書店には9月11日に200部を配本し、そのうち何部が販売されたかは把握できていないと報じた。高文研のお知らせは配本部数や販売数に触れていない。購入者への対応として高文研は、個人の購入者には返金すると発表した。購入者には本書に氏名、住所、電話番号、メールアドレスを書いたメモを同封し、送料着払いで高文研に送るよう求めた。書店には取次会社経由の返品を求め、図書館には書店または取次会社経由の返品を求めた。

高文研はお知らせで読者と関係者に謝罪し、編集時の確認作業を徹底して再発防止に努めると表明した。連絡先として東京都千代田区神田猿楽町の住所、電話番号03-3295-3415、メールアドレスinfo@koubunken.co.jpを掲載した。

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本書の主題と著者の略歴

本書の主題は沖縄戦の戦時行政の責任を問うことだ。版元ドットコムの内容紹介は、本書が沖縄戦で住民が軍と戦時行政によって戦場に動員され命を落とした経緯を取り上げ、戦時行政が罪として裁かれることなく責任が問われてこなかった構造を「無責任の体系」として分析すると説明する。島田叡知事を住民に寄り添った救世主とする語りが教科書や映画で広まり、平和教育で定着した現状を批判する構成だ。目次は戦争犯罪と法的責任、島田叡の語り、平和教育の再生と構造転換などを扱う。

著者の島袋純は1961年生まれで、琉球大学教育学部政治学教授を務める。1993年に早稲田大学大学院博士後期課程を修了し、博士(政治学)を取得した。行政学と地方自治論を専攻し、沖縄振興体制や沖縄の政治行政を研究対象とする。版元ドットコムは主な著作として『「沖縄振興体制」を問う』『沖縄が問う日本の安全保障』などを挙げる。

今回の高文研の発表は、本書の主題の当否ではなく、147頁から149頁の判例3件の存否に限定した措置だ。琉球大学の公式見解や島袋教授本人の追加説明は、10月9日時点で確認できる公表情報に含まれていない。使用AIの特定や3件の具体名、販売・回収の実数も公表情報に含まれていない。

出版現場のAI利用に残る教訓

今回の事例は、専門家が書籍の執筆でAI検索を使い、出力の存否を確認しないまま掲載した点に特徴がある。高文研は著者と協議のうえで絶版と回収を決め、編集時の確認作業を徹底すると表明した。絶版と回収、全額返金という対応は、判例の存否という事実関係の誤りが書籍の信頼を損なうと判断した結果だ。

AIの出力が実在しない文献や判例を示す現象は、一般にハルシネーションと呼ばれる。沖縄タイムスは関連記事で研究にもAIの落とし穴があると伝え、専門家も見誤る可能性を指摘した。出版や研究でAIを使う場合、データベースの正式名称とURLを開き、原典の書誌や判決文に当たる作業が欠かせない。引用する判例や文献は、AIの回答ではなく一次資料の閲覧で確定する必要がある。

購入者は高文研のお知らせに従い、書店や図書館は取次経由で対応する必要がある。研究者や読者は、本書147頁から149頁の3件を判例として引用しないよう注意する必要がある。

出典・参考リンク

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