スーパーマーケット業界で、AIを活用した発注業務や需要予測の導入が加速している。生鮮食品を中心に値引き判断や欠品防止、廃棄ロス削減といった課題に対して、AIがデータに基づく意思決定を支援する仕組みが広がりを見せている。
背景にあるのは、人手不足と物流コストの上昇、そして消費行動の多様化だ。発注業務は経験と勘に頼る部分が大きく、担当者によって判断が分かれることもあった。AIを導入すれば、過去の販売データや天候、曜日、地域特性などを組み合わせて需要を予測し、適切な発注量を算出できる。
各社の導入事例
ヤオコーは、AIによる需要予測を発注業務に導入し、欠品率の低減と廃棄ロスの削減を同時に達成した事例として知られる。同社は、店舗ごとの販売傾向を学習したAIが提案する発注量を、担当者が確認しながら最終判断する形を採用している。これにより、経験の浅い従業員でも一定水準の発注精度を確保できるようになった。サミットも、AIを活用した発注システムを導入し、特に惣菜・弁当の需要予測に活用している。気象データや近隣のイベント情報などを考慮した予測により、売り切れによる機会損失と、売れ残りによる廃棄ロスの両方を減らす効果を狙う。
トライアルは、独自開発のAIを活用した需要予測と自動発注の仕組みを全国の店舗に展開している。同社はPOSデータだけでなく、防犯カメラの映像や顔認証技術を組み合わせた購買行動分析で知られ、棚割りの最適化にもAIを活用している。バローは、AIによる発注支援システムを導入した店舗で、生鮮食品の廃棄ロスが削減されたことを公表している。ライフもAIを活用した発注システムを導入し、精肉や青果部門で業務効率化を進めている。
値引き最適化と欠品削減を両立する仕組み
スーパーの売り場では、閉店間際の値引きシールが日常的に見られる。この値引きのタイミングと割引率をAIが最適化する取り組みも進んでいる。食品ロス削減の観点から、売れ残りそうな商品を適切な時間帯に適切な価格で販売することで、廃棄を減らしつつ売上を確保する狙いだ。欠品対策も重要なテーマだ。商品が棚にないと、顧客はその商品を買えず、店舗は売上機会を逃す。AIによる需要予測は、曜日や天候、地域のイベントなどを考慮して欠品リスクを事前に検知し、適切な発注量を提案することで、欠品による機会損失を防ぐ。
特に生鮮食品は、鮮度が落ちると値引きや廃棄が必要になる。AIが需要を正確に予測できれば、過剰な仕入れを避け、ロスを最小限に抑えられる。一方で、予測が外れた場合のリスクもあり、各社はAIの提案をそのまま使うのではなく、担当者の判断と組み合わせた運用をしている。棚割りの最適化もAI活用の領域だ。売れ筋商品の配置や、商品同士の関連性を分析して、購買意欲を高める棚の構成をAIが提案する。トライアルなどは、この分野でもAIを積極的に活用しており、店舗ごとの特性に応じた棚割りを実現している。



