国内最大級の全社展開、年間200万時間の工数削減を目指す
NTTデータグループが2026年9月、グループ全社員約15万人を対象に生成AIを全業務プロセスへ組み込む「全社AI化」構想を本格始動させた。同社発表によると、2027年度末までに年間約200万時間の業務工数削減を見込む。単なるツール配布にとどまらず、業務プロセスそのものをAI前提で再設計する「AIネイティブ化」を掲げ、国内企業としては最大規模の取り組みとなる。
同社はこれまで、開発現場向けのコーディング支援やドキュメント自動生成など「つくる側」のAI活用を先行させてきた。しかし、営業・人事・経理・法務などバックオフィスを含む全職種で「使う側」の生産性を底上げしない限り、グループ全体の競争力強化にはつながらないとの判断から、方針を大幅に転換した。
「AIエージェント基盤」を自社開発、ガバナンスと拡張性を両立
今回の核となるのが、NTTデータが独自に構築した「AIエージェント基盤」だ。複数の大規模言語モデル(LLM)を用途に応じて切り替え可能なマルチモデル構成を採用し、社内データの学習・参照・マスキングを一元管理する。同社技術本部長のコメントによると、「特定ベンダーへのロックインを避け、モデル性能の向上やコスト変動に柔軟に対応できるアーキテクチャを自社で持つことが、継続的な価値創出の前提になる」という。
ガバナンス面では、入力データの機密度判定、出力結果の検証ワークフロー、利用ログの完全保存を標準装備。金融・公共案件を多く抱える同社のコンプライアンス要件を満たしつつ、現場主導のプロンプト改善やエージェント自作を認める「ガバナンス付き民主化」を実現したとされる。
現場主導の「業務再設計」が鍵、PoCから本番への壁をどう越えたか
全社展開に先立ち、2025年度から約300業務で実施したPoC(概念実証)では、単純な作業置き換えでは効果が限定的であることが判明した。例えば契約書レビュー業務では、AIによる一次チェック導入だけでは弁護士の最終確認工程がボトルネックになり、全体工数は15%減にとどまったとされる。これに対し、契約テンプレートの標準化・条項ライブラリの構築・リスク判定ルールの明文化といった「業務プロセスそのものの再設計」を併せて実施したケースでは、60%以上の削減を達成したという。
この教訓を踏まえ、同社は「AI導入=業務改革」として、各事業部門に「AIトランスフォーメーション推進責任者」を置き、IT部門と業務部門の共同チームでプロセス再設計を進める体制を整えた。PoC段階で現場の声として多かった「プロンプトが難しい」「出力が信用できない」といった課題には、社内ナレッジを学習させた専用エージェントをテンプレートとして提供し、ノーコードでカスタマイズ可能な仕組みで対応している。


