ソニーモバイルコミュニケーションズは2026年9月19日、フラッグシップスマートフォン「Xperia 1 VII」を国内で発表した。同社が「オンデバイスAIの本格実装」と位置づけるこのモデルでは、Snapdragon 8 Gen 4を搭載し、NPU専用の128MB SRAMを新たに搭載。クラウドに依存せず、端末内で完結するAI処理を、撮影・音声・ディスプレイの三領域で同時実行できるアーキテクチャを構築した。
発表会で同社プロダクト戦略部門の担当者は「NPU専用メモリの確保により、大規模言語モデルの量子化版を常駐させつつ、画像認識・音声処理のマルチタスク実行時にもレイテンシを10ミリ秒台に抑えられた」と説明している。これにより、リアルタイム被写体追従AFや、会議音声の話者分離・要約生成、HDR動画のフレーム単位トーンマッピングを、オフライン環境でも動作させられるとしている。
NPU専用SRAMがもたらす「常駐モデル」の現実味
従来のスマートフォンでは、NPUがメインメモリを共有利用するため、大容量モデルの常駐はアプリ切り替え時のスワップ発生や、バックグラウンド処理との競合で実用的ではなかった。Xperia 1 VIIでは、NPU直結の128MB SRAMを物理的に分離し、量子化済みのLLMとビジョンモデル、音声モデルの3つを常時ロードした状態で待機させる。
ソニーの技術資料によると、この構成により「撮影中の被写体認識」「動画撮影時のリアルタイムHDR合成」「通話・録音時の話者分離・ノイズ除去」「テキスト入力支援の文脈補完」の4タスクを並列実行しても、NPU使用率はピーク時で68%に留まるという。残りのヘッドルームは、サードパーティアプリが独自モデルをロードするための余地として開放されている。
撤廃された「クラウド前提」の撮影ワークフロー
最もユーザー体験の変化が大きいのがカメラ機能だ。Xperia 1 VIIでは、従来「リアルタイム瞳AF」として独立していた機能を、オンデバイスLLMによるシーン理解と統合した「インテリジェント・シーン・ディレクター」として刷新。被写体の瞳だけでなく、姿勢・手持ち物・背景の文脈まで推論し、露出・フォーカス・ホワイトバランスをフレーム単位で最適化する。
例えば、子供が公園でボールを追いかけるシーンでは、「ボールを持つ手」「走る脚」「背景の遊具」を同時に認識し、連写中もピント面を動的に追従する。さらに、撮影直後に生成される「撮影意図メタデータ」には、シーン説明・推奨トリミング・レタッチ提案がJSON形式で埋め込まれ、Adobe LightroomやCapture Oneへの読み込み時にプリセットとして自動適用される。