双日が実施した調査で、Microsoft 365 Copilotを導入している大企業の担当者のうち87.5%が「社内情報が複数のシステムに分散していること」を課題として認識していることがわかった。生成AIツールの導入が進む一方で、データのサイロ化が実務での効果を制約するボトルネックになっている実態が鮮明になった。調査は2026年9月に公表され、キーマンズネットが報じている。
導入が進んでも解消されない「検索の壁」
CopilotはMicrosoft 365の各アプリケーション上で動作し、文書作成や会議録要約、メール下書きなど個人の生産性向上には一定の効果を発揮してきた。しかし、社内のナレッジがSharePoint、Teams、OneDrive、ファイルサーバー、さらにはSaaS型の業務システムなどに散在している環境では、Copilot単体では横断的な検索・参照が難しい。調査対象の担当者は「必要な情報がどこにあるかわからない」「複数システムをまたぐ検索に時間がかかる」といった声を共通して挙げており、生成AIの回答精度や網羅性がデータの物理的な分散によって損なわれている構造が見えてくる。
「横断検索AI」へのニーズが具体化
同じ調査では、情報分散への対策として「社内横断検索AI」の導入を検討・期待する声が強まっていることも明らかになった。従来のエンタープライズサーチ製品に加え、生成AIを組み合わせて自然言語クエリで複数データソースを同時に検索し、要約まで提示するソリューションへの関心が高い。ある情報システム部門の責任者は「Copilotで個人の作業は速くなったが、組織としてのナレッジ活用には別のレイヤーが必要だと気づいた」と話す。ベンダー側でも、RAG(Retrieval-Augmented Generation)アーキテクチャを用いて社内システムと生成AIを接続する製品・サービスの提供が相次いでいる。
中堅・中小企業でも「チャット止まり」からの脱却が課題
クラウドワークスの別調査では、生成AIを活用する中小企業の80.9%がチャット利用の段階にとどまり、業務プロセスへの組み込みまで進んだのは19.1%にとどまるという。大企業であれ中小企業であれ、導入初期の「チャットで試す」フェーズから、業務フローに組み込まれた「検索・参照・実行」のフェーズへ移行する際に、データの分散という共通の壁に直面している構図だ。キーマンズネットの取材では、情シス部門が「ツールを入れただけでは現場は変わらない」と認識を改め、データ基盤の整備や横断検索機能の導入をセットで計画し直す動きが広がっているという。
実装の年、次のステップは「つなぐ」機能
2026年は日本企業の生成AI活用が「実験から実務へ」シフトする「実装の年」と位置づけられてきた。個人の生産性ツールとしての導入が一巡した今、組織全体のナレッジをいかに生成AIに参照させ、業務判断に資するアウトプットへつなげるかが次の競争軸になりつつある。情報分散の解消と横断検索AIの実装は、その鍵を握るプロダクトカテゴリとして、今後のベンダー動向とユーザー企業の選定基準を左右することになりそうだ。