首都高速道路で生成AIの活用が急速に広がっている。GoogleのGeminiを日常的に使いこなすヘビーユーザーが1年で10倍に増えたことが、ITmediaの報道で紹介された。土木や料金所、保全など現場を担う社員が多い組織での定着例として注目を集めている。
同社の社員構成は平均年齢が高めで、ITを使いこなすことが本業ではないメンバーが中心だ。そうした条件のもとで利用を押し上げた推進方法が、他社の情報システム部門やDX推進担当の関心を呼んでいる。派手な一斉導入ではなく、現場の心理的なハードルを下げる工夫の積み重ねが特徴だ。
導入直後は関心が続かなかった壁
首都高速道路ではGemini for Google Workspaceを導入した当初、ライセンスを配布しても利用が一部の社員に偏っていた。ITmediaによると、便利さを伝える説明会を開いても、日々の業務に戻ると従来の手順に戻る社員が多かった。検索や文書作成をAIに置き換える発想自体が定着していなかった。
背景には、高速道路の維持管理や交通管制といったミッションクリティカルな業務の特性がある。誤りが許されない現場では、新しい道具への慎重さが強い。管理部門が利用を呼びかけても、現場の社員には自分の仕事への効果が見えにくく、試すきっかけが生まれにくかった。
推進担当は利用ログを分析し、ログイン回数だけでなく文書の下書きや議事録整理などに繰り返し使う社員をヘビーユーザーとして定義した。そのうえで、なぜ一部の社員だけが使い続けられるのかを聞き取り、つまずきの共通点を洗い出した。操作の難しさよりも、最初の問いかけ方が分からないという声が目立ったという。
ヘビーユーザーを10倍にした具体策
転機になったのは、活用のハードルを下げる小さな仕掛けだった。首都高の推進チームは、業務別にそのまま使えるプロンプト例や活用パターンを社内ポータルで公開した。議事録の要約や稟議書のたたき台、問い合わせ文面の作成など、明日から使える形で示したことが利用のきっかけになった。
あわせて、部署ごとに身近な成功例を共有する場を設けた。ITmediaの報道では、ベテラン社員が自分の仕事の工夫を語ることが効果的だったと紹介されている。専門家による機能説明よりも、同僚の具体的な時短体験のほうが納得感を生んだ。自分にもできると感じられる流れを作った。
質問しやすい支援体制も整えた。ヘルプデスクに専用窓口を置き、つまずきをその場で解消できるようにした。利用が進んだ部署の管理職が率先してGeminiを使い、会議資料の準備方法を変えたことも波及を後押しした。まねしたくなる事例を増やす進め方が拡大につながった。


