図面のデータを渡すと、溶接ロボットが動く手順をAIが組み立てる。ファナックとGoogle Cloudが共同で開発する「AI Welding Agent」が、製造現場向けの新しい制御の形として注目を集めている。ロボットのティーチングや条件設定を言葉と図面で進められる点が、これまでの自動化と大きく異なる。
国内のものづくり現場では、人手不足と熟練技術の継承が長年の課題になってきた。溶接は特に経験による調整が多い工程で、自動化の効果が出にくい領域とされてきた。図面と現場の言葉をつなぐ仕組みが、実務のどこまで入り込めるかが焦点になっている。
図面から溶接手順を作る仕組みとは
ファナックの発表によると、AI Welding Agentは図面情報と作業指示をもとに溶接経路や条件の候補を生成する。ロボットの動作プログラムを一から手入力するのではなく、対話形式で手順を組み立てる設計になっている。Google Cloudの生成AI基盤とファナックのロボット制御を組み合わせた構成だ。
作業者が図面ファイルを読み込ませ、継手形状や板厚、狙う品質を指定すると、エージェントがパス数や電流、速度の初期値を提案する。提案内容はシミュレーション上で経路として可視化され、干渉や抜けを確認してから実機に送る流れになる。現場の言葉で修正を指示できる点が特徴だ。
従来の溶接ロボットは、ティーチペンダントによる教示や専用ソフトでの事前設定が前提だった。直線の単純な継手は自動化しやすい一方、曲線部や複雑な構造物は教示に時間がかかった。AIが初期経路を起こすことで、立ち上げの手間を減らす狙いがある。
Googleの生成AIとつながる制御の特徴
Google Cloudの発表によると、この仕組みは大規模言語モデルが図面の幾何情報と作業履歴を解釈する。ファナックのロボットコントローラとAPIで連携し、生成した動作プランを安全な命令に変換して実行する。クラウド側で推論し、現場側で制御する分担になっている。
製造現場のデータをそのまま外部に出せない場合に備え、権限管理やデータの保持範囲を分けられる設計だと説明されている。図面や条件はプロジェクト単位で管理され、他の拠点のデータと混ざらない運用が想定されている。セキュリティと現場の使いやすさを両立させる考え方だ。
エージェントは一度きりの生成で終わらず、試し溶接の結果を受けて条件を調整する。溶け込みやビード形状の画像、作業者のコメントを入力すると、次の候補に反映される。人の目による確認を挟みながら、手順を育てていく使い方が前提になっている。