GMOインターネットグループの熊谷正寿社長が、自らの執務環境に12台のPCを並べ、生成AIを駆使して業務アプリケーションを自作している実態が明らかになった。日経ビジネス電子版の音声コンテンツ「日経ビジネスAUDIOモーニング」(9月18日配信)で語られた内容によると、同社ではすでに社員の約7割が生成AIを用いてコードを書いており、経営トップ自らが率先してAIネイティブな働き方を体現している。
経営トップ自らが「開発者」に回帰
熊谷社長は取材に対し、日常的に複数のPCを使い分けながら、生成AIと対話しつつ社内業務向けのツールやダッシュボードを自らコーディングしていると明かした。経営判断に必要なデータを即座に可視化するためのアプリケーションを、外部発注や社内システム部門を待たずに自ら構築・改修するスタイルだ。「アイデアを思いついたらすぐ形にできる。それが最大のスピードアップになる」と語り、AIを単なる補助ツールではなく、自身の思考を拡張するパートナーとして位置づけている。
この取り組みは、熊谷社長が掲げる「AIネイティブ企業への変革」の象徴的な一幕だ。同社では2023年頃から全社的な生成AI活用を推進してきたが、トップ自らが最前線でコードを書く姿勢を見せることで、組織全体の心理的ハードルを下げる効果を狙っているとみられる。
社員7割が「AIでコードを書く」組織文化
同社の調査では、エンジニア職に限らず、営業や企画、バックオフィスを含む全社員の約7割が「生成AIを使ってコードを生成・修正した経験がある」と回答した。熊谷社長は「プログラミングの知識がなくても、自然言語で指示すれば動くものが返ってくる。ノンプログラマーでも自分の業務を自動化できる時代になった」と強調する。
実際、営業担当が顧客管理の集計スクリプトを自作したり、経理担当が月次締めのデータ整理をPythonスクリプトで自動化したりする事例が日常化しているという。従来ならシステム部門への依頼票を起票し、数週間待つ案件が、当事者自身の手で数時間〜数日で完結するようになった。この「内製化の民主化」が、同社の業務スピードを底上げしているとみられる。
ガバナンスとリスク許容のバランス
一方で、全社員が自由にコードを書き、本番環境に近いデータを扱う運用にはリスクも伴う。同社では情報システム部門が「AI活用ガイドライン」を整備し、機密データの入力制限や、生成コードのレビュー体制、ライセンス管理などをルール化している。ただし、ガチガチの承認フローを敷くのではなく、「まず試せ、問題なら止める」というアジャイルなガバナンスを採用。熊谷社長自身も「失敗を恐れずに触らせることが、リテラシー向上の近道」と語り、心理的安全性を担保する方針を貫く。