生成AIを用いたソフトウェア開発の自動化が、実験段階から実務導入へと移りつつある。富士通研究所は9月17日、大規模言語モデル(LLM)を活用して設計書からソースコードを自動生成する社内システムの検証結果を公開した。同システムは要件定義書や基本設計書を入力として、JavaやPythonなどの実装コードを出力する。検証では約2万行規模の業務アプリケーション開発に適用し、コード生成の正答率が85%に達したことが確認された。
設計書駆動でコード生成、従来のプロンプト方式と一線
富士通研究所の取り組みは、チャット形式で指示を与える従来の「プロンプト駆動」とは異なり、設計書という構造化されたドキュメントを直接読み込ませる点に特徴がある。同研究所の発表によると、設計書には画面遷移図、ER図、API仕様書、バッチ処理フローなどが含まれ、これらをマルチモーダル対応のLLMが解析してコード骨格を生成する。生成されたコードは人間のエンジニアがレビューし、修正をフィードバックして再学習させるループを回す。
「設計書そのものを正として扱えるため、仕様変更時の影響範囲特定やトレーサビリティ確保が容易になる」と同研究所は説明する。従来のプロンプト方式では仕様変更のたびに指示を書き直す必要があったが、設計書を更新すれば自動的にコード側へ反映される仕組みだ。
検証で見えた「85%」の内訳と残る壁
検証対象は、金融機関向けの勘定系システム一部機能約2万行。生成されたコードを単体テストにかけたところ、コンパイルエラー0件、ロジックエラー約15%という結果だった。ロジックエラーの多くは、業務固有の例外処理や暗黙知に基づく判定分岐、レガシー資産とのインターフェース周りに集中した。
「LLMが学習データに含まれない社内固有のルールや、ドキュメント化されていない慣習までは拾いきれない」と同研究所は話す。対策として、設計書にメタデータとして業務ルールを明示的に記述するテンプレートを整備し、プロンプトエンジニアリングではなく「設計書エンジニアリング」へシフトさせている。
開発プロセスそのものを再設計、レビュー工程を前倒し
同システム導入に合わせ、富士通研究所は開発プロセスも見直した。従来は詳細設計→コーディング→単体テスト→結合テストという流れだったが、設計書完成時点でコード生成・レビューを並行させ、詳細設計工程を事実上吸収させる形に変えた。これにより工数全体で約30%の削減効果が見込まれるという。


